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脳科学者・黒川伊保子先生に聞くプラトニックラブのすすめ 結婚後の正しい恋の在り方【後編】

結婚しても、恋をするのは自由。

前編では、日常の隙間にぽっと花が咲くように現れた心のときめきが、女性を美しくし、人生を豊かに彩るスパイスになるというお話を聞きしました。

では、実際に恋をした場合、どんな心づもりでいるのが理想なのでしょうか。結婚に寄り添う恋愛のコツを脳科学者の黒川伊保子さんにお聞きしました。

独身の時の恋愛とはまったく別物と心得て

安田 前半のお話で、恋をするのは架空の人物でもいい、というお話をお聞きしましたが、もし生身の男性を好きになってしまった場合、心で恋愛するにしてものめり込むわけにはいかないのが既婚者の恋。気持ちの調整がむずかしそうな気がします。

黒川 めくるめく恋愛をするタイプの人は、結婚したからといってその性質が変わるわけではないので、ヘトヘトに疲れてしまうこともあるのは確か。だからといって、恋心は止められないから仕方ないのよね。

安田 たとえば、私はもともと恋愛に依存するタイプで、あの苦しみをまた味わうのかと思うと怖い。たとえば、独身の頃なんて、連絡が1日ないだけで不安で何も手につかなくなっていたので。当時はメールだったけど、今だとLINEなので、既読スルーとかされたら辛すぎます(笑)。

黒川 そこで不安になる必要がないのが、結婚に寄り添う恋愛なのですよ。ラインが既読にならなくても、気にしなくていいし、連絡が途切れたら自分から連絡すればいいのですよ。

安田 自分がしたいようにすればいいということですね。でも、男性は追いかけさせたほうがいいっていうし・・・。

黒川 それは、独身の頃の恋愛ね。

安田 何か、違うんですか?

黒川 独身の頃の恋愛だと、結婚が最終目標だから、すごく好きになってもらうために追いかけさせることはある程度必要。でも、今回の恋愛はゴールが無いの。幻想の世界だから、よほどリアルに踏み込まない限りはずっと続けられる。

安田 確かに・・・。 結婚というゴールがないと思うと、余計な駆け引きは必要ないのかもしれませんね。

黒川 だから、連絡したかったらすればいい。会いたいと思ったら、会いたいと言えばいい。

安田 それ、恋愛本に書いてあることと真逆ですね。

黒川 恋愛本は、結婚というゴールがある独身女子のためにあるものだからね。そのセオリーを参考にしても意味がないんです。

安田 それは盲点でした。

恋は最高のアンチエイジング

安田 ということは、やはり素直に本能に従うことは、健康にもいいということでしょうか。

黒川 良く言われていることですが、ときめきを感じるとホルモンバランスが良くなるし、脳の電気信号の流れも良くなって、イライラが軽減されます。それに、血流もアップするので、健康のためにもアンチエイジングのためにもいいことばかりなのですよ。

安田 恋してると疲れを感じにくいのは、そのためなんですね。

黒川 今の女性たちは、仕事のしすぎや乱れた食生活、睡眠不足などでホルモンバランスが崩れやすくなっています。そんな時代に、恋ができるっていうだけでも貴重なこと。エステに行くより効果な化粧品を使うよりも、美容にはテキメンなはず。

最近の男子は独占欲が薄い?

黒川 ちなみに「男性に追いかけさせたほうがいい」というのも、すごく古典的な考え。現代の男子は、2、30年前より男性ホルモンのテストステロンが35%くらい減ってるんですよ。

安田 そんなに!?

黒川 独占脳というのは思考ではなくテストステロンが作っているもの。だから現代男子は独占欲が少なくなっているんです。だから、追わせるために駆け引きしてたら、そのまま終わっちゃう可能性もあるの。

安田 時代によって、恋愛戦略が変わってくるんですね。

黒川 とくに既婚者の恋愛だと、結婚する必要もないし、手に入れるものが何もないから、駆け引きする必要はないの。めくるめく恋じゃなくて、淡く、ずっと続くのが結婚に寄り添う恋愛なんです。

安田 淡くドキドキが続くのって、すごく理想的な気がします。女として綺麗でいられそう。

黒川 助けてもらうお姫様になるのではなく、彼がいちばん嬉しいとき、1番辛いときに思い出してもらえる、女神みたいな存在が理想です。

安田 それって、すごくいい女(笑)。でも、都合がいい女と紙一重なのでは?

黒川 そりゃそうよ。女神は都合のいい女じゃないとなれません。

安田 都合のいい女ってマイナスイメージだったけど、たしかに自分も結婚しているわけだしそこをわきまえておくことは重要なのかもしれません。

大人の女だからこその魅力

安田 最近周りでは、40過ぎてからモテ期が来たという女性がけっこういるんです。男性が好きなのは若い女性という固定観念があったから、ちょっと驚いています。

黒川 それは、前半でも話したけど歳を重ねて色々経験した女性は、内面が磨かれているからね。独身女性にはない魅力にあふれています。男はちゃんとそれを見抜くんです。

安田 余裕というか、安心感にも男性は惹かれているんでしょうね。

黒川 それから、知的な会話ができるのも大人の女性ならではですね。それまでの仕事で得た見解とか、社会的な視線から意見を言うことができる。たとえば、30代、40代の男性が頑張っているつもりだけど、不安になるときがあるんです。そういうときに、自分にはないモノの見方をしてくれる人を求めるんです。

安田 そんな存在になったら唯一ですね。

黒川 これは、キャリアがあるなしに関係はありません。たとえば本が好きだったら、読書で得た視点からものを考えればいい。スポーツが好きなら、アスリートの視点から考えればこうなるのではないか、など、自分が追求している世界の中での意見が言えればいいんです。

安田 社会的な視点といっても、仕事の範囲じゃなくても良くて、自分ならではの見方をするということですね。

黒川 そんな女性は本当に貴重だから。それから、褒め方ひとつにしても、大人の女性は違う意見が言えるはず。たとえば若い子だと「背が高くてかっこいいですね」「頭がいいですね」とか単純でしょう? でも、大人の女性だと「あなたのそういう価値観が好き」「そのものの見方は他の人になかなかできないと思う」など、経験で見分が広がっているから、人間性とか深い部分で褒めることができる。そこに、男性は惹かれるわけです。

安田 そんなこと言われたら、女でも落ちそう(笑)。

黒川 あとは、「あなたならできる」っていう一言を言ってあげればいいんです。その一言で、男性は救われるから。

安田 確かに、若い女性に言われるより、大人の女性に言われた方が言葉に重みと説得力が生まれますね。

黒川伊保子が考える大人の美しさ

安田 ちなみに、黒川先生から見た美しい大人の女性像をお聞きしたいです。

黒川 まずは、姿勢が美しいこと。姿勢が悪いと脳に酸素が足りなくなって、血流が低下します。すると、感情の起伏をコントロールできなくなるから聡明な女性にはなりえません。また、男性もそれを無意識のうちに見抜くから、とくに「結婚に寄り添う恋愛には絶対に手を出したくない相手」とみなされます。

安田 無意識のうちに見抜いてるって怖い! たしかに、感情の起伏が激しいと、男性から見て面倒に思うのかもしれません。

黒川 あとは、髪にツヤがあること。これも血流の悪さと関連するし、髪にツヤがないと自分を大切に扱っていない感じがしますね。意外に「あの女性は髪にツヤがない」と言う男性が多いんですよ。

安田 確かに、髪のツヤは生命力とつながりますしね。大人になると清潔感が大事になっていくので、そういう意味でも髪のお手入れはしておきたいと思います。

35歳からは自分を被害者にしない

安田 内面はどのように磨いていけばいいのでしょうか。

黒川 中身は磨かなくても大丈夫。女は年を重ねていけば経験値が魅力になるので。

安田 なるほど。本をたくさん読まなくちゃとか、趣味をもっと増やさなくちゃ、とか思っていたけど、わざわざ意識してする必要はないんですね。

黒川 ただ、大人になったらもう後ろ向きの発言をしないことと、自分を被害者にしないことが大切です。たとえば、相手に嫌なことを言われたときに「ひどい」とか、「どうして分かってくれないの?」ではなく、「どうしたの? あなたのものとは思えないわ、その発言」と言ってあげる。それよりも、「私はいいのよ。でも、そんな発言していたらあなたがダメになっちゃう」と母の目線で相手を心配してあげるのです。

安田 ついイラッとなって、被害者意識になりがちですが、母目線になればいいんですね。

黒川 「ひどーい! 」と自分が被害者になってもいいのは35歳まで。せっかく中身が磨かれているのに、「私はこんなに頑張っているのになんで?」と被害者になったら大人の女性には見えません。

安田 確かに・・・。

黒川 自分目線でものを言わないことが重要です。たとえば、「私とデートするのに、そんなひどい恰好してくるってないんじゃない? 」というのは、被害者目線。「あなたすごいいい男なのに、なんでそこで手を抜くの? 」というのは彼目線です。

安田 後半の言い方なら、嫌な感じがしませんね。

黒川 これを好きな人だけじゃなくて、夫にできると最高なんだけどね。

安田 そうですね。努力します(笑)。なんだか、黒川先生のお話をお聞きしているだけで、歳を重ねることにもワクワクしてきました。本当にありがとうございました。

黒川伊保子
1959年、長野県生まれ。人工知能研究者。脳科学コメンテイター。感性アナリスト。随筆家。奈良女子大学理学部物理学科卒業。世界初の語感分析法である「サブリミナル・インプレッション導出法」を開発し、マーケティングの世界に新境地を開拓した感性分析の第一人者。論理的でありながら、女性ならではの感性が紡ぎだす、柔らかく包み込むような語り口調は老若男女問わずファン多数。「前向きに生きるなんてばかばかしい 脳科学の心のコリをほぐす本」(マガジンハウス)、「女の機嫌の直し方」(集英社インターナショナル)など。

安田光絵
美容・恋愛ライター。マタニティプランナー。 当webマガジン『Rethink夫婦の時間』ディレクター。