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脳科学者・黒川伊保子先生に聞くプラトニックラブのすすめ 結婚後の正しい恋の在り方【前編】

結婚したからといって、一生、夫以外の男性に心を奪われないとは限らない。でも、社会的にも道徳的にも、結婚したら夫を愛し抜くのが常識。さらに、不倫と呼ばれる行為は、法律に違反すること。

でも、妻になって、ママになったとしても、女であることには変わらない。人間の本能としてのトキメキだって、諦めることが正しいのでしょうか。今回、Rethinkディレクターの安田光絵が、脳科学者の黒川伊保子さんに、結婚後の女性の恋の在り方について、脳科学の視点からお聞きしました。

トキメキの賞味期限は、3年

安田 黒川さんとはお仕事を通じてお付き合いさせていただいていますが、私の結婚前からなので、もう9年近くになります。

黒川 その頃、安田さんの恋愛の悩みをたくさんお聞きしましたね(微笑)。

安田 ステージが変わって、夫婦関係についてお聞きするようになる日が来るなんて、不思議な感覚です。まず、私のここ数年の悩みは、子供ができてから、夫婦が恋人関係ではなくパートナーになってしまったことです。

黒川 分かります。でも、脳科学から見ても、それは仕方のないこと。じつは、哺乳類のメスは子供を産んでから約3年で、その相手に対して警戒信号が入るんです。その理由は、出来るだけ多くの遺伝子を残す本能が働くから。とくに2人目を産むと、別の遺伝子セットを求めるようになるんです。

安田 多くの遺伝子を残したいっていう本能は、男性だけじゃなくて女性もなんですね。

黒川 子孫繁栄の本能は男女ともに変わらないので、あれほど愛していた人でも産後、嫌になるのはそのためなのです。

安田 それ、よく分かります。私もそうだったので・・・。

黒川 だから、その期間を乗り越えて、今の婚姻制度で夫婦というしくみを続けるのは、じつはとても工夫がいることなんです。

仲良し夫婦は、友達夫婦

安田 工夫がいるんですね。確かに、夫婦といえども他人なので、気を遣わずに自然に身を任せていたら亀裂が入りそうです。でも、たまに、子供が生まれても、喧嘩もほとんどぜず、ずーっと仲良しの夫婦もいますよね。

黒川 それって、愛情というより友情に近い関係の夫婦なのかもしれません。友達婚とかお見合い結婚だと、恋愛の浮き沈みが少ないから、“死ぬほど好き”が無いかわりに“すごく嫌い”にもならないんです。

安田 なるほど。周りの仲良し夫婦は親友みたいな感じもします。

黒川 だから、夫のことがすごく嫌になってしまって、という人は、たぶんその夫と大恋愛をしていたはず。

安田 確かに。でも、そのときの恋愛の甘い気持ちを知っていると、それがなつかしくてまた味わいたと思うこともあります。

黒川 めくるめく恋を知っていると、その経験が忘れられないんですよね。恋に落ちるというのは、奈落の底に落ちるような感覚。この世のすべてが彼以外のすべてが敵になっても
彼と一緒にいたい、みたいな。

安田 素敵。恋に落ちたら止められないですもんね。でも、結婚していて恋に落ちたらその気持ちを封印するべきなのかとも考えます。

黒川 ううん、落ちたら素直にしたほうがいい。好きな気持ちを無理に抑え込むと、本能に反しているのでそれがストレスになって免疫力も下がるんです。

安田 そうなんですね! それは身体にも良くないですね。

黒川 暮らし、子育て、介護など乗り越えていかないといけないリアルな外側に寄り添うようにして、幻想の恋があってもいいと私は思いますよ。

恋は最高のアンチエイジング

安田 ということは、やはり素直に本能に従うことは、健康にもいいということでしょうか。

黒川 良く言われていることですが、ときめきを感じるとホルモンバランスが良くなるし、脳の電気信号の流れも良くなって、イライラが軽減されます。それに、血流もアップするので、健康のためにもアンチエイジングのためにもいいことばかりなのですよ。

安田 恋してると疲れを感じにくいのは、そのためなんですね。

黒川 今の女性たちは、仕事のしすぎや乱れた食生活、睡眠不足などでホルモンバランスが崩れやすくなっています。そんな時代に、恋ができるっていうだけでも貴重なこと。エステに行くより効果な化粧品を使うよりも、美容にはテキメンなはず。

男友達とランチだけでも女度がアップ

安田 とはいえ、身近な男性でときめける人ってなかなかいなくて。

黒川 必ずしも現実の人じゃなくて、相手が芸能人やスポーツ選手でも効果はほとんど変わりません。たとえば、昔で言うとヨン様にときめいてドキドキする。それだけでも、脳的には現実の恋と同じ作用が働いています。

安田 私、ミーハーなので仮想の恋はかなり得意です(笑)。

黒川 仮想でも、かなりいい感じでホルモンが出てると思いますよ。でも、恋のときめきがなかったとしても、たまに生身の男性のフェロモンの匂いを嗅ぐことは大事。良く、男子校の女の先生はいつまでも若いといわれるけど、それは常に男子のフェロモンの中にいて女性ホルモンが活性化しているからなんです。

安田 異性なら誰でもいいのでしょうか?

黒川 体質的に受け付けない、という男性じゃなければ大丈夫。たとえば、たまに、男友達とランチするだけでも効果的です。

安田 結婚すると、男友達とも交流がなくなってしまいがちなので、まずは男友達探しからですね。

黒川 必ずしも恋愛に発展する必要もないので、習い事や、何かの会に参加してもいいかもしれません。たとえば、フライフィッシング、ダンスサークル、カヌー教室、山登り、全国の酒蔵をめぐる会など。いつもとは違う男子の匂いを嗅ぐのが大事。

安田 おじさんでもいいんですか?

黒川 できたら、男性ホルモンの分泌が多い、若めの男子が理想です。

安田 年下男子とランチ、夢が膨らみますね(笑)。

→→→ 後編へ続く

黒川伊保子
1959年、長野県生まれ。人工知能研究者。脳科学コメンテイター。感性アナリスト。随筆家。奈良女子大学理学部物理学科卒業。世界初の語感分析法である「サブリミナル・インプレッション導出法」を開発し、マーケティングの世界に新境地を開拓した感性分析の第一人者。論理的でありながら、女性ならではの感性が紡ぎだす、柔らかく包み込むような語り口調は老若男女問わずファン多数。「前向きに生きるなんてばかばかしい 脳科学の心のコリをほぐす本」(マガジンハウス)、「女の機嫌の直し方」(集英社インターナショナル)など。

安田光絵
美容・恋愛ライター。マタニティプランナー。 当webマガジン『Rethink夫婦の時間』ディレクター。