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心理カウンセラーに聞くセックスレス問題【後編】 「したくない」は「永遠にしたくない」? セックスレスを解消したい!

夫婦関係は良好に感じているけれど、実は〝セックスレス〟。そんなママ友には相談しづらいお悩みを、心理カウンセラーの石原加受子さんに伺いました。前編はこちら。

メイクにファッション、自分磨きは誰のため?

石原さん 自分の感情に向き合うことは、自分のためであるというお話を前編ではしましたね。ところで、結婚後、下着に構わなくなったり、メイクや服装がだらしなくなったりということはありませんか。いわゆる〝自分磨き〟をしなくなるというものです。

編集部 あぁ、思い当たる節だらけです。

石原さん 〝自分磨き〟って、自分の要求をちゃんと満たす、本来は〝人間磨き〟なんです。誰かのために外見を磨く、他者から見られた自分がどう見えるかというのが第一にあると、やめたときにだらしなくなってしまう。自分で、自分のためにやる気持ちが大切です。自分の気持ちを大切にしていたら、そこに女性らしさも付いてくるのだと思いますよ。

編集部 恋人のために自分磨きに励んで、さらには結婚して相手を自分の〝所有物〟だと思っていたら、やる気がなくなるのは当然なんですね。

妻から誘って断られたら、もう立ち直れない!

編集部 ところで、夫がしたい素振りを見せてきても、こちら側が性欲につながらないのはどうしたらいいんでしょうか? 断るうちに、最近は誘ってくることもなくなったという話もよく聞きます。逆のパターンで、妻から誘ったら夫に断られてしまい、傷ついて立ち直れないという人もいます。

石原さん それはまた、〝0か100〟の考えになっているのかもしれません。一度セックスレスになっているのであれば、「すぐセックスしましょう」「するかしないか」ではなくて、少しずつ気持ちを向き合うようにしていく必要があります。夫が「やりたくない」と言ったのは、「もう永遠にしたくない」ではなく「今日はしたくない」だったのかもしれません。「ごめんね、今日は会社でこんなことがあって疲れているんだ。でも次の休みには、時間を作るから2人でお茶でも飲みに行こう」と言えたら、全然違いますよね。感情が育っている夫婦なら、話し合うことができるんです。妻から伝える側も一緒です。

編集部 セックスに結びつかなくてもいいんですか?

石原さん 急にセックスが無理だとしても、きちんと気持ちを掘り下げて話し合うことができれば、満足する人もいます。会話があることで、幸福感って満足するんですよ。極端にいえば、セックスそのものをしなくても、そうやって心が満たされる。通じあう時間があれば、必ずしもセックスが必要というわけではありません。それに、いい関係となってお互いに認め合うことができれば、仮に、愛情があるのに性欲が戻らない場合でも、満足させることを相手のためにしたいという気持ちが起こります。
添い寝するだけでもいいかもしれないし、手をつないで寝たり、自分の体が反応しなくても、セックス以外の手段で満たしてあげたいという気持ちがわき起こるんです。相手が自分の為に努力する姿を見れば、愛されていると感じるし、一緒にいたいという気持ちも増すかもしれません。性欲も、自然とその中で戻ってくるのではないでしょうか。
普段から心が通い合う会話がない、愛し合う会話もない。それでいてセックスもない。それなのに、間をはしょってセックスをしようとするのはおかしな話です。

満たされていないのは性欲? それとも……。

編集部 確かに……。セックスレスに悩んでいると言う時点で、セックスそのものがないことよりも、夫とのコミュニケーションがないことに悩んでいるのかもしれません。

石原さん じゃあ性欲だけ満たせば満足するのか、風俗に行けば、浮気をすれば満足するのかといえばきっと違いますよね。愛情がないと満足できないんです。本当はさみしいからよね。満たされていないと感じる女性に伝えたいのは、何に満たされていないのか?ということに、もっと向き合って欲しいということ。「さみしい」と感じる瞬間に敏感に気づいて欲しいんです。
夫と会話しているときに感じたのなら、相手が聞いてくれなかったのか、ご飯の感想をくれなかったからなのか、食べてもらえなかったのか、どこに感じたのか。ごはんを作ったときに、「ありがとう!今日のおかずはなんだろう、どんなメニューにしたの?」って聞いてもらえたら嬉しいですよね。嬉しいと感じるのか、さみしいと感じるのか、自分の細かな感情をスルーしないでほしいです。

編集部 自分の感情を大切にすることが、こんなにもいろんな面に波及すると思いませんでした。

セックスを最終ゴールにしないで。

石原さん 〝セックスをすること〟が最終目標ではありません。感情を育て、お互いに認め合い、〝個〟として尊重すること。そのうえで、まずは自分から「ちょっと手をつないでいいかな」「今度の休みに子どもを預けて、ちょっとだけお茶しない?」「2人で散歩に出てみよう」と、自然な形で少しずつ進めてみてください。手をつないだら「嬉しいな」とか、「心地いいな」、そんな些細な気持ちにも、きちんと意識を向けてみて。そうすれば、少しずつ気持ちが戻っていくと思います。

編集部 セックスレスの問題というよりも、もう夫婦仲全体の問題なんですね。

石原さん 全てはつながっていくし、夫婦の関係が人生のひな形となるんです。重ねてになりますが、喧嘩してしまうような心が通い合っていない人とセックスしたくはなりません。こういうことを、ていねいに向きあっていくことで、夫婦関係も親子関係も良好になります。ちなみに、そうしていくと夫の稼ぎもよくなっていくかもしれませんよ。自分自身を大切にして、〝相手を自分の所有物〟と思わずに、対等な人間関係を築く。そんなふうに仲がいい夫婦は、金銭的にも恵まれていくんです。

編集部 金銭的にも・・・!

石原さん 人と人とが仲がいいというのは、ものすごくいろいろなスキルがあるということなんです。その関係は、社会にも広がっていくはずですから。人間的に対等でよい関係を築いている夫婦と、押さえ込んで支配する関係の夫婦がいるとします。それぞれが起業したとしたら、どちらに社員がついていきたいか、会社が発展しそうかと考えれば、明らかですよね。

編集部 セックスできないことだけを見つめるのではなく、夫婦の関係を小さなことから気づいていき、夫婦関係全体を変えていくというのは、これから長年を連れ添いたい相手だからこそとても希望に感じます。

石原さん そうですね。単純なことでしょ。夫が掃除をしてくれたら「ありがとう」。それで自分も気持ちがいいし、お礼を言うことでお互いを〝個〟として認め合える。相手も気持ちがいい。そうしてちょっと手を握りあったり、一緒に散歩にでたり、その時の気持ちを「心地いいね」「嬉しいな」と言葉にして伝える。そうすれば自然と、もっと一緒にいたい、手をつなぐより、もっと相手に触れたいと気持ちが高まっていくはずです。

編集部 まずは「ありがとう」から始めてみます。どうもありがとうございました。

石原加受子(いしはら・かずこ)
心理カウンセラー。 「自分中心心理学」を提唱する心理相談研究所オールイズワン代表。日本カウンセリング学会会員、日本学校メンタルヘルス学会会員、日本ヒーリングリラクセーション協会元理事、厚生労働省認定「健康・生きがいづくり」アドバイザー。『金持ち体質と貧乏体質』(KKベストセラーズ)、『とにかく優位に立ちたい人」を軽くかわすコツ』(学研プラス)など著書多数。https://allisone-jp.com/