Rethink 夫婦の時間 二人のこと、もう一度。

心理カウンセラーに聞くセックスレス問題【前編】 仲良しなのにセックスレス。それ、本当に納得してますか?

一般的にセックスレスは、1ヶ月以上の間が空いてしまうことを指しています。そう言われて、「えぇ!? そんなに短いのに?」と感じる人も多いはず。結婚して、子どもが生まれ、特に大きなトラブルやケンカもなく、仲良く過ごしている……。でも、実は何年も〝セックスレス〟という夫婦が今、増えているんです。〝したい夫〟と〝したくない妻〟、もしくは逆も然り。その折り合い点はどこに? もう夫に対して、「したい」って思わないけどこのままでいいのかな? 隣のママ友には相談しづらい、そんな気持ちの行き場について、心理カウンセラーの石原加受子さんにお話を伺いました。

感情が育たないと、愛情も育たない?

編集部 最近はセックスレスが増えてきていると聞きますが、どうしてなんでしょうか。

石原さん 今は、情報社会でしょう。感情を動かさなくても暮らしていける、感情を抑えて生きている人が増えているんです。私の捉え方では、〝感情が育っていない人〟と表現していますが、感情が動き、発達するような社会でなくなっているんですね。人と触れ合うことって、愛情の表れですから。でも、愛が欲しい、愛を感じたいと思うことが少なくなっているのかもしれません。

編集部 夫婦の間でも、感情の交流がなくなっているということですね。でもセックスレスの夫婦も、一度はラブラブだった時期があると思うんです。

石原さん 今と昔では、その〝ラブラブ〟の基準も違うのかもしれませんね。昔に比べて今の恋愛スタイルは、あっさりしています。それに、大学に入ると勉強しなくなるとよく言いますが、〝結婚〟もそれと同じで、婚活やコンパで〝結婚〟をゴールに捉えてしまうのも問題のひとつですね。

編集部 結婚したらそれで終わりと、気を抜いてしまうということでしょうか? 

石原さん そうですね。恋愛期間中は、相手を思いやって「これをしてくれてありがとう」「助かるわ」って伝えたり、誕生日や記念日に気持ちを表したりしていたはずなんです。でも、相手をゲットしたらその気持ちも終わり、そばにいるのが当たり前になってしまっていませんか?

編集部 あぁ、胸が痛いです。

石原さん でも、「もし離婚という選択肢があるかも」、と考えたらどうでしょう。相手に対して〝いるのが当たり前〟にはならないですよね。そもそも、夫婦は仲がよくてもそれぞれが〝個〟なんですよ。

仲が良いからこそ、夫婦の関係は〝個〟!

石原さん お互いに理解し合うことを、〝認め合う〟と言いますよね。認め合うというのは、お互いが〝個〟であり、自分のことは自分でするという認識です。お互いの敷地があって、自分の敷地で何かをやるのは自由ですが、相手の方へ入るには同意が必要。自分が食べる料理もお風呂掃除も、全部自分でするもの。それを、「やってもらっている」と考えれば、「ありがとう」と言えますよね。相手に何かを伝えたいとき、お願いしたいときも、「ちょっと今いいかな? これお願いできるかしら」「私の気持ちを聞いてほしいの」「私はこう思っているんだけど、あなたはどう?」と言える気がしませんか?

編集部 相手と自分の敷地を分けて考えるだなんて、なんだか他人行儀な気もしますが……。

石原さん 相手にやってもらうのが当たり前、相手が自分の時間をこちらのために使うのは当たり前というのは、相手に対して〝自分の所有物〟の気持ちがあるから。馴れ合いになってしまっているんだと思います。〝所有物〟だと思っているから、「相手が逃げてしまう=離婚の可能性」という気持ちも生まれません。

仲良し夫婦は〝以心伝心〟、これって本当?

編集部 でも、長く結婚生活を重ねてきたからこその、〝以心伝心〟とか、〝あうんの呼吸〟というのもあるように思います。

石原さん それは、愛し合っている状態のとき。セックスレスに悩んでいるということは、お互いの気持ちが通い合っていないと、どこかで感じているはずです。それに、日本人は以心伝心とよく言いますが、それは男性のために女性が察していた、男性優位社会の時代の名残の言葉だと私は解釈しているんです。

編集部 そういえば長年連れ添った夫婦だと、夫が「お茶」と言う前に妻が差し出すとかよく聞きますね。

石原さん そう、まさに女性が察して行動しているという男性社会ですよね。やっぱり言葉で伝えるというのは大切だと思いますよ。

「セックスレスだけど、仲はいいんです」の本音の部分。

編集部 なるほど。セックスレスで悩んでいるということは、表面上は仲がよくても、どこかコミュニケーションが足りないことが原因なのでしょうか。でも、セックスレス以外はうまくいっていると感じている人たちは多いようですが。

石原さん うまくいっていると思っている人たちも、じゃあ具体的に細かく見ていくとどうでしょうか。自分自身の細かな感情に気がつくことが、まずはとても大切なんです。料理や洗濯などの家事や子育てを「自分がやらなくちゃ」と思っている人、夫が手伝わないと諦めている人はいませんか? 
例えば料理を作るのが嫌だなと思うときがありますよね。当たり前のように、「今日は料理を作りたくない」けれど、「しなければならない」と思って作っている。そうすると、1人で料理をしていることにイライラしてしまったり、手伝ってくれない夫にモヤモヤを感じたり。さらにはせっかく作ったのにもかかわらず、「飲んで帰る」なんて言われた日には……。

編集部 それはもうイライラが爆発して、あっという間に喧嘩です(笑)。

石原さん そうなる前に、自分の感情ひとつひとつに向き合って、どんなときにつらい、嫌だと感じているのかに向き合ってみてください。単純に「ただ作りたくない」のではなくて、いつものように「たくさんの品数は作れない」のだったら、作る量を減らしてもいいはず。料理に気持ちが向かわないのであれば、作らないという選択肢もあるんです。インスタントラーメンにしたっていい、外食に変えたっていい。

編集部 作る、作らないの極端な思考ではないということでしょうか。

石原さん そうですね。料理は一例です。まずは自分の気持ちに気がつく、それか自分がどうしたいのかをよく考えて、自分自身を大切にするために、その気持を心が通じ合うように伝えると、お互いに〝認め合う〟関係が築いていけます。お互いに感情が育っていれば、料理をしたくないことも「もう作りたくない!」「なんでご飯ないんだよ!」ではなくて、「今日はこんなことがあって疲れているから、作りたくないんだけれど」「じゃあ代わりに僕が作ろうか? 何か買って帰る? それとも外に出ようか」と会話ができますよね。具体的な気持ちを掘り下げ、自分自身の感情に気がつく。そしてそれをきちんと伝えることに向き合ってほしいんです。

編集部 確かに、馴れ合いの関係になっているからこそ、言葉足らずで伝わりきっていないのはありそうです。でも、それがセックスにもつながるんでしょうか?

石原さん 小さなことのように思うかもしれませんが、自分の感情に向き合わずにいると感情は育ちません。喧嘩にならないよう、自分の気持ちをきちんと相手に伝えてみてください。喧嘩する相手とセックスはしたくないでしょう。セックスも、「しなくちゃいけない」と思うとできないんです。自然と感情が動くように生活の中で積み重ねていくことが大切です。感情が育っていないと、会話がないと〝0か100か〟の極端な考え方をしてしまいます。「しなければならない」と、自分を縛り付けてしまうんです。自分を縛って、愛し合うことはできませんよね。

編集部 自分自身のためにも、気持ちをきちんと伝えていくと考えれば、なんだか変われそうな気がします。

続く後編では、実践編として「どう夫に接したらいいの?」という具体的なお話を伺います。したい気持ちを伝えたときに、断られたらどうしますか? 反対に、夫から誘われたら、どう断っていましたか? 後編をお楽しみに。

また、スーパーダディ協会が昨年行った「フウフゲンカシンポジウム」では、夫目線の夫婦喧嘩の解決法を討論。その様子をレポートしたこちらの記事もぜひチェックしてくださいね。

石原加受子(いしはら・かずこ)
心理カウンセラー。 「自分中心心理学」を提唱する心理相談研究所オールイズワン代表。日本カウンセリング学会会員、日本学校メンタルヘルス学会会員、日本ヒーリングリラクセーション協会元理事、厚生労働省認定「健康・生きがいづくり」アドバイザー。『金持ち体質と貧乏体質』(KKベストセラーズ)、『とにかく優位に立ちたい人」を軽くかわすコツ』(学研プラス)など著書多数。https://allisone-jp.com/