Rethink 夫婦の時間 二人のこと、もう一度。

クリエイティブに働く妻にインタビューvol.3 「仕事も家事も生活する上で当たり前に必要なこと。だから夫も私も“仕事と家庭の両立”を考えたことがないんです」

視点を変えて考え、それを形にして世の中に発信できるクリエイターを日本各地に創出していくプロジェクト=「Rethink Creator PROJECT」。そのプロジェクトで活躍する妻たちの働き方に迫る連載、第3弾。フリーランスとして、また、Rethink Creatorとしてもプロジェクト発足時から活躍されている下田裕美さんに、プロジェクトに参加した経緯や仕事のやりがい、仕事と家庭の両立などについて聞きました。

見知らぬ土地でゼロからスタートしました。

東京の印刷会社に入社し、DTPオペレーターやグラフィックデザイナーとして様々な仕事を経験した後、ウェブデザイナーとしてウェブ制作会社に転職。その後、結婚が決まり、2012年、夫の新潟への転勤がきっかけとなり、フリーランスとして働く道を選んだ下田さん。

「夫は福岡、私は東京出身なので新潟のことは何もわからず、人脈もなく、全部ゼロからのスタートでした。でも、ちょうど新潟に引っ越したタイミングでデジタルハリウッドSTUDIO新潟ができて、ご縁があり、クリエイターを目指す学生たちのトレーナーをすることになったんです。もともと自分の性格的に、接客業が好きで、塾講師の経験もあったので教えることに抵抗はありませんでした。学校での仕事が楽しかったというのもありますし、そのときにフリーランスとして退職した東京の会社からいただいていた仕事もしていたのですが、自宅で籠って仕事をしているだけでは絶対に知り合えない人、業界や新潟の情報と出会えることがとても貴重な場となりました。20代の会社員時代よりも、自由にたくさんの方と交流が図ることができたので、とても充実した5年間でした」

2017年に夫の転勤が終わり東京へ。現在はRethink Creator PROJECTを運営している会社、クリエイターズマッチのパートナークリエイターとしても活躍している。

「まだ新潟にいた頃、デジタルハリウッドがクリエイターズマッチと共同で『デザイナースタートアップ講座』を新しく立ち上げることになったんです。新潟校でも開講の準備を始めることになって、講座の勉強会でクリエイターズマッチの方とお会いしてお話を聞くと、すごく楽しいなと感じて。その講座の講師になるには、クリエイターズマッチのパートナー登録試験を合格しないといけないと知り、挑戦してみました。それに受かってからは、『デザイナースタートアップ講座』の講師と並行しながら、クリエイターズマッチのパートナークリエイターとしても活動することになりました。2017年の9月から新潟で新しい講座を始めましょう、という話もしていたんです」

ところがその矢先、夫の転勤で今度は東京に戻ることになったのだそう。

「東京に戻ってから、フリーランスとしてのデザイナーの仕事をしながら、数ヶ月間は2週間に1回、新潟まで通って講座をしていました。今は講座が開講になれば現地に行きつつ、オンラインの手法も取り入れながら、新潟校とコミュニケーションをはかっています。あと、新潟校での経験を活かし、都内の学校でも仕事を続けています。
そして、2018年から立ち上がったRethink Creator PROJECTにも参加しています。日々の生活や仕事に追われると、バタバタ過ごしがちになってしまいますよね。そんな日常でも、このプロジェクトを通して『視点を変えて考える』という“刺激”を、自分にも周りにももたらすことができたらいいなという気持ちではじめたんです。キックオフミーティングから参加して、プロジェクトロゴの制作コンペやプロジェクトのコンテスト作品のサンプル作りにも関わらせていただきました」

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Rethink クリエイターコンテストが始まった2018年。コンテストに参加する人のための参考作品として選ばれて下田さんのポスター。クリーンなたばこのある未来を予感させてくれる。

東京から新潟に通ってまで講師の仕事をしていたとは、なんともバイタリティ溢れる活躍ぶり。下田さんは今年、Rethink Creator PROJECTの第2シーズンで開催した新潟セミナーで、地域クリエイターとして登壇もした。

「セミナーの直前まで、参加者が満員になるのかという不安もあったんですが、すぐに定員いっぱいになったので驚きました。みなさんの声を聞いて、同じことで悩んだりしているんだなというのが印象的でした。何か新しいものを取り入れたいとか、やってみたい、考えてみたいという人が多いことを実感しました。私自身も、新潟に住んでいた頃も、東京に戻ってからも同じことを思っていて。このプロジェクトを通じて出会った人たちと、“何か面白いことがしたい”と感じたんです」

お互い求めていることを的確に伝えるから、喧嘩にならない。

下田さんは今年で結婚8年目になるとのこと。仕事と家庭の両立はどのように?

「そもそも両立というのがよくわからなくて……。夫にも、仕事と家庭の両立って何割くらいか聞いてみたんです。そうしたら、仕事と家事は別物だから、それをわざわざ横に並べて比率で考えること自体、変なんじゃない?と。ああ、やはりそうかと思いました。私たちはふたりとも、仕事も家事も生活する上で当たり前に必要と思っているので、仕事と家庭の両立について考えたことがないんですよね」

驚くことに、これまで一度も夫婦喧嘩をしたことがないそう。

「なぜ喧嘩しないのかを考えてみたら、自分がしてほしいことをお互い明確に伝えるからではないかと。後出しジャンケンをしないんです。察してほしいということもないですし。例えば、お味噌汁を作ってほしいと料理が苦手な夫に頼む時は、“私が作った出汁水500㏄に味噌は大さじ1.5、具は食べたいものなんでもいれていいよ”と、自分の作り方の最少レベルのポイントだけ伝えるんです。心がけているのは、仕事と同じようにとにかく的確に伝えること。それだけ守ってというと、彼はそれだけすればいいからトラブルがない。してもらったことに対して思っていたことと違ったとしても、まずは感謝をしてお互い文句は言わないようにしています。だから喧嘩にならないのかもしれないです」

お話を聞いていると、相性の良さはもちろん、ご夫婦がお互い自然体で通じ合っている様子が伝わってくる。夫婦間のルールも特にないとのだとか。

「自分が好きなこと、例えば私は料理と犬の世話とか、ざっくりした担当制はありますが、家事の分担のルールはありません。ルールを作っても自分で破るのが目に見えているので、私たち夫婦は逆に作らないんです(笑)。あと何かルールを作るときって、片方に負担が偏ってしまう状態だからルールを作って公平にするんだと思うんですよね。でもルールがなくてもお互いに、なんとなく半々で手伝いあいながらやっています。私が洗濯機をまわしたら、干すのは彼も一緒にやるとか、彼がお皿を洗ってくれていたら、私はその間にお風呂を沸かしておこうかなとか、割と自然とやっていますね」

人と知り合わなければ、チャンスは巡ってこない。

下田さんは現在、ウェブのLPやバナーなど広告系のデザインを中心に手がけている。仕事でやりがいや楽しさを感じるのはどんなときなのだろうか。

「自分が制作したものが色んな人の目に触れることも嬉しいですし、お客様にできあがったものを喜んでいただけたときも嬉しいですね。クリエイターズマッチさんの仕事も、様々なクリエイティブに携わるチャンスがあるのも楽しいですし、年に1回、会社の方・クリエイターのみなさん・お客さまが集まれるアワードがあるので、“また今年1年がんばりたいな!”と仕事へのモチベーションがあがります。全国からクリエーターさんが集まるので、フリーランス事情からその地方ならではの働き方などを伺えたりするので、とても勉強になります。それは特にRethink Creator PROJECTで思いました。プロジェクトに参加した時、いろいろな地域からクリエイターさんと出会うことができたので」

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2018年のクリエイターズマッチアワードの授賞式に登壇したときの下田さん。ルーキークリエイター、ベストキャパシティクリエイターを受賞した。

最後に、これからの展望を聞いてみると。

「フリーランスだと家にこもりがちで、自分で自分の成長を感じられないのが嫌だなと思っていて。でも、クリエイターズマッチやデジタルハリウッドのおかげで、会社員時代とは違ったかたちで様々な人と関わらせてもらえたりしているなと思うんです。何か新しいことを始める時は、人と知り合わなければ、チャンスは巡ってこないので、人との出会い、関わりはずっと求めていきたいなと思っています。あとは作業をもっと早くできるようにして、時間に余裕を作って、じっくり勉強する時間を設けたりとか、クリエイティブとは関係なく、自分にやれることを探していきたいなとも思います」

インタビュー中、とても気さくで朗らかな語り口が印象的だった下田さん。知らない土地でフリーランスとして仕事を始めるのには大変な決心がいるはずですが、下田さんの、人と関わっていきたいという思い、いつでも前向きな姿勢が、それをすんなり叶えてくれたように思えました。また、「夫婦喧嘩を一度もしたことがない」、「仕事と家庭の両立について考えたことがない」というお話にも驚きましたが、自然とお互いを思いやる気持ちや心がけがなせる技なのではないでしょうか。ぜひ参考にしたいものです。

これまでの「クリエイティブに働く妻にインタビュー」はこちら!
vol.1「やりたいことがあっても、一歩踏み出さないと何も始まらない
vol.2「完璧を目指すのをやめて、優先順位をつけたことで変わりはじめました