Rethink 夫婦の時間 二人のこと、もう一度。

世界の夫婦事情を調査。 妻になっても母になっても、いつまでも「男女の関係」を続けられるフランスの夫婦の秘密【前編】。

「アムール(=愛)の国」とも呼ばれるフランス。実際、結婚して何年経っても、恋人の頃のようにラブラブな夫婦が多いと聞きます。その秘訣を確かめるため、現地で暮らす二人の妻にインタビューしてみました。


参加者
Aさん…フランス在住10年。パリで知り合った日本人の夫と4年前に結婚。1歳になる長女とパリで暮らす。
Kさん…フランス在住12年。8年前にフランス人の夫と結婚。6歳の長男、4歳の長女とパリ郊外に家を構える。

いつまでも「個」を大切にするフランス。

編集N フランスでは、いくら歳を重ねても、いつまでもラブラブな夫婦が多いと聞くのですが、実際はいかがですか?

Aさん 確かに、まわりの夫婦を観察してみると、いつまでも恋人同士のような夫婦が多い気がします。老夫婦になっても、手を繋いでお互いを想いやる姿をよく目にしますしね。Tさんのお家に遊びに行っても、ご主人はTさんのことが大好きなんだなっていうのが、態度ですぐにわかるくらい(笑)。

Kさん (笑)。愛情表現は直球な部分があるかもしれないですね。日本人は察することが美学とされる部分があるけれど、フランスで暮らしていると自己主張をしないと生きていけないから。だから、愛情表現もストレートなのかなって思います。単純に、日本と比べるとスキンシップが多いということも、そう見える要因かもしれないけれど。

Aさん あと、立場は変わっても「男女の関係」が続いているんだなって感じがするな。だって、子どもが生まれても、日本みたいにお互いを「パパ(お父さん)」「ママ(お母さん)」って呼ばないよね? いつまでもお互いの名前で呼び合うのが、ラブラブな秘訣のひとつなのかなって思ったり。

Kさん 夫婦間では絶対に名前で呼び合うよね。結婚して家族になったとしても、家族の前にひとりの人間っていう「個」を尊重する意識が大きいからかな。それに、日本の「○○ちゃんママ」みたいな呼び方もしないよね。子どもの友達のパパやママを呼ぶときだって、名前で呼ぶことがあたり前だから。

Aさん 確かに! 我が家はフランスに住んでいるのに、いつの間にか子どもの前では「パパ」「ママ」呼びが定着しちゃって(笑)。それを聞いたフランス人の友人にびっくりされたことがある。でも、呼び方って重要だよね。夫のことを「パパ」って呼ぶようになってから、いつの間にか「家族」っていう意識が強くなった気がする。

Kさん でも、こればっかりは育ってきた環境が違うから仕方ないよね。フランスで出産して驚いたのは、新生児でも自分の部屋が与えられて、別々に寝ることが当たり前だということ。枕元にマイクを置いて、子どもが泣いたら別の部屋にいてもわかるようになっているの。親も「子どもであってもひとりの人間」という感覚だし、子どもたちもそうやって育っていくから、自然と「個」を尊重するようになるのかもね。

意識的にとる夫婦の時間。

Aさん フランスの夫婦といえば、子どもをベビーシッターに預けて、夫婦でデートに出かけることも多いよね?

Kさん うん。月に何回かベビーシッターをお願いして、その間ゆっくり食事をしたりね。子どもと過ごす時間と同じように、夫婦だけで過ごす時間も大切にしている夫婦が多い気がする。でも、それが社会的にも当たり前だから、後ろめたさもないの。

編集N 確かに、日本では夫婦の時間だけのために、子どもを預けてまで出かけるという考えは薄い気がします。

Kさん ですよね。でも、夫婦の時間がないと、子育ても行き詰まってしまう気がしませんか? 二人で充実した時間を過ごせたら、疲れてギスギスしてしまった心もほどけて、子どもにもきっといい影響を与えると思うんだけどな。

Aさん 我が家はふたりとも自宅で仕事をしているから、ベビーシッターを頼ることはしなかったの。でも、子どもが保育園に通い始めてから、久々に夫婦の会話をした気がする。もちろん、普段から会話はしているんだけれど、それは毎日の必要最低限のことだったんだって気づいて(笑)。

Kさん すごくわかる。目の前のことでいっぱいいっぱいなんだよね。

Aさん 次のバカンスのこと、今住んでいるアパートのこと、子どもにはこれを習わせたいとか、二人きりじゃないとゆっくり話せないことってあるんだって、そのときに再確認しました。朝、子どもを預けに行って、その帰り道にカフェで休憩しているんですが、いまではその30分の休憩が夫婦の時間になっています。

編集N 素敵な習慣ですね。フランスはバカンス(長期休暇)も多いと聞くのですが、その過ごし方は?

Kさん 基本的に家族で旅行して、のんびり過ごすことが多いですね。日本みたいにあちこち観光するっていう旅行じゃなくて、1週間〜2週間単位でリゾート先のアパートを借りてゆっくりと過ごします。義実家の家族と一緒に過ごしたりもしますよ。バカンスは、家族で一緒に過ごす時間を大切にするための旅行っていう感じ。

Aさん 家族で過ごす休日を大切にする考え方って、フランスらしいよね。そのためにも、夫が率先して動いている気がする。私は、フランス人の友人と一緒にバカンスに行くこともあるんですが、食事や子どもの世話も、嫌な顔せずに夫がしているイメージ。今日のディナーは夫が担当する日、みたいに分担制にしていたり。フェアだなって思う。

編集N 確かに、私もフランスを旅行して、友人のお家に食事に招かれたんですが、その日の料理のほとんどを友人の夫(フランス人)が作ったと聞いて驚いたことがあります。

Kさん 確かに、それはすごく助かってる。もちろん、全ての家事や育児が夫婦平等とは言い切れないけれど、日本の友人夫婦と比べると、当たり前のこととして夫が家事や育児に参加している気がしますね。それは共働きが当たり前だからっていうのもあると思う。

編集N というと?

Kさん 日本も最近は結婚しても働く女性が増えているけれど、まだ専業主婦という感覚も残っていますよね? 実際、私の姉も子どもが小さなうちは専業主婦をしていましたし。でも、フランスでは男も女も働くことが当然。

Aさん 子どもを産んでも、割と早くに仕事復帰している気がするね。

いくつになっても女性であることを忘れない。

Kさん そうそう。日本は母乳での育児を推奨されているようなところもあるけれど、フランス人の友人は、生後3ヶ月で卒乳した人も。その理由を聞くと、ベビーシッターさんに預けやすいっていうことと、「胸の形が崩れるからやめたの」って! 母親になったからって、女であることを捨てなくていいんだって目から鱗でしたね。

Aさん 日本人的感覚だと、母親になったら子ども中心の生活でまわっていくように感じるけれど、こちらでは母でもひとりの人間という感覚だもんね。

Kさん 日本だと若さ=正義みたいなことがあるけれど、フランスは真逆。単純に年齢ではなく、その人がどんな風に歳を重ねてきたのかが重要視されている気がするよね。素敵なマダムになるために、ひとりの女性として、妻として、母親として、日々頑張っているイメージかな。

Aさん シルバーヘアのマダムが、赤いルージュでおしゃれしている姿とかをみると、いくつになっても女であることを楽しんでいるなぁって思うよね。それには、やっぱり夫がいつまでも妻のことを「女性」として接していることが大きいと思う。それって、妻としては嬉しいんじゃない?

Kさん そうかも。実はそれが当たり前だから、今まで疑問に思ったことがなくて。

Aさん それって恵まれてるんだよ! 私の夫は、やっぱり感情を表に出すのが苦手だし、私もどう表現したらいいのかわからないところもあって。でも、フランス人の友人夫婦とかと接するようになって、夫がいい影響を受けている気がする。

Kさん 例えば?

Aさん 友達を招いたパーティーのときは、率先して料理をしてくれたり。あと、レディーファーストもだんだん身についてきた(笑)。一緒に外出しているときに、いつの間にか後ろのマダムのためにお店のドアを開けていたり。

Kさん こっちで生活していると、男女問わず、お年寄りや子どもたちにすごく親切だなって思うよね。ベビーカーを担いでメトロの階段を降りようとすると、誰かがさっと手助けしてくれたり。自己主張は強くて嫌になることはたくさんあるけど(笑)、それでも憎めないのは親切な人が多いからなのかも。

Aさん 誰かが人助けをしている姿は、日本にいたときよりもよく見かけるかも。しかも、それがすごく自然だから、素敵なんだよね。

Kさん 人に頼りやすいっていうところもあるよね。

編集N 実際にどんなところで感じますか?

Kさん 例えば、フランスでは小さな子どもを一人で歩かせてはいけないんです。学校や習い事、お友達の家に遊びに行くときも、必ず大人がついていないといけない。でも夫婦でカバーできないときは、ベビーシッターさんにお願いしたり、信頼できる友達にお願いしたり。そうやって、第三者を気軽に頼りやすい環境もいいなって思いますね。

Aさん 子どもたちの学校がバカンスのときは、おじいちゃんおばあちゃんのお家に行ったりね?

Kさん そう、親が仕事のときは、子どもたちを祖父母の家に1週間とか預かってもらうという家庭も結構多いですよ。

編集N そんなときも、夫婦の時間が過ごせますね。

Kさん 子どもたちがいないとさみしいけれど、自分の仕事に集中できたり、夫とゆっくり過ごせるから、すごくいいリフレッシュにもなっています。子どもたちも、祖父母にいっぱい遊んでもらえて嬉しそうだし、お互いにいいことばかり。あと、フランスは一部の人を除いて残業ってほとんどないから、家族揃って夕食をとることも多いなって思いますね。料理も毎日こったものじゃなくて、冷凍食品でOK。共働きで疲れているのはお互い様だから、お互いに手抜き料理に文句を言うこともないし。家族での食事を大切にして、いつもコミュニケーションをとれているのも、仲良く過ごせるコツなのかもしれないですね。

後半へ続きます。