Rethink 夫婦の時間 二人のこと、もう一度。

精神科医・名越康文先生に聞く。 なぜ、夫は結婚後に変わってしまうのですか?②後編

結婚する前は、あれこれ尽くしてくれていた夫が、結婚後はなにもしてくれなくなった。そんな妻のお悩みを、精神科医の名越康文さんに相談。前編では、夫が結婚後に変わってしまったきっかけは、相互にあると名越さんから教わりました。その一因が、結婚時に目指した理想の妻を追い続けるあまり、結果として夫に必要以上に尽くし過ぎてしまうこと。その結果、夫がいわば子ども返りをしてしまっていないかという点。では、具体的にどう解決していけばいいのかを、後編で掘り下げてみました。

現代では、夫婦の役割が崩壊しつつある。

編集部 前回、変わってしまったきっかけは、夫だけでなく妻側にもあるかも知れないという視点を学びました。確かに、夫に頼むのも面倒ということもあって、全部自分でやってしまっていたかもしれません。それを解決するためのアドバイスはありますか?

名越先生 先ずは価値観として、自分がやったことは、10分の1くらいに思っておいた方がいいですね。僕たちの多くは、自分のしたことは過大評価し、相手のことは過小評価するものですから。たとえば、「私はこんなにもしているのに、あなた、どうして何もしてくれないの!」と主張して、彼がすんなり受け入れてくれたらトラブルにはならないはずですから。

編集部 その通りです。

名越先生 我慢し続けなさいなんて言うつもりは、さらさらありません。ちゃんと自分の中で「これが2人の間の平等じゃないか」という基準はあるべきです。しかしそれをいつ、どういう言葉で、どうより伝わる形で伝えるか、は考えるべきだと思うんです。

編集部 昔は今の時代よりも離婚率が低かったと思うんですが、それは女性が我慢していたからですか?

名越先生 たしかに昔の方が女性は不幸だったという側面もあるでしょうが、そうすっきり単純に比較できるだろうかとも思います。というのも昔は役割に準じることが普通だったという面があるからです。以前は男は外で働き、女は家庭を支えるという、いわば役割があったので、夫婦の間での価値観がぶつかるということが少なかったという面はあるでしょうね。でも現代においてその役割が非民主的だと言われ始めたて、自由になってよかった反面、みんなどうしたらいいのか分からず暗中模索状態でいるという感じがします。

編集部 そうですね、夫とどういった関係を築いていくべきか悩んでる女性は多いですね。

まずは1日を幸せに過ごすことが大切。

名越先生 世の中の妻たちは一般にすごく頑張っているし、努力しています。でも一方で自分の頑張りや努力したことにこだわり過ぎると、日々夫に怒って生きなければならなくなります。

編集部 怒ってばかりの人生は嫌ですね。

名越先生 はい、過去は変えられないし、当たり前になっているを変えることはもちろん必要ですが、それまでにはちょっと時間がかかる。家族がそのような段階にある時、私がよく提案するのは、まずは目の前の旦那さんと今日1日幸せに過ごそうと思うことから始めましょうというものです。それなら今すぐに取り組めます。

編集部 先の未来を考えるのではなく、今日1日をですか?

名越先生 はい。今日1日だけ、そして次の日も今日1日だけ、そう思って過ごしていたらあっという間に1年です。過去や将来のことばかり考えると暗くなることが多いから、まずは目の前の人物と仲良く暮らすことを目標にするわけです。

編集部 今日1日だけ、いまだけと考えててみるとできそうな気がします! ありがとうございました。

名越康文さん
なこし・やすふみ●1960年、奈良県生まれ。精神科医。相愛大学、高野山大学客員教授。近畿大学医学部卒業後、現・大阪府立精神医療センターにて精神科救急病棟の設立、責任者を経て、99年に退職。現在はテレビ・ラジオでコメンテーター、雑誌連載、講演会、映画評論、漫画分析などさまざまな分野で活躍中。「SOLO TIME~ひとりぼっちこそ最強の生存戦略である」(夜間飛行)など著書も多数。公式HP http://nakoshiyasufumi.net/