Rethink 夫婦の時間 二人のこと、もう一度。

精神科医・名越康文先生に聞く。 なぜ、夫は結婚後に変わってしまうのですか?①前編

付き合っている時や新婚の時は、とても優しく、あれこれ尽くしてくれたのに、何年も一緒に暮らしたり、子どもが生まれたりすると、夫が何もしなくなった、冷たくなった…という話をよく聞きます。なぜ男性は変わってしまうのでしょうか? その理由を、テレビでもおなじみの精神科医・名越康文先生に聞いてみました。

昔と今の夫。
比べることが間違っている。

編集部 毎日生活していれば慣れが生じるのは仕方がないとして、なぜ、夫は結婚後に変わってしまうのでしょうか?

名越先生 なぜ変わったか……、それを悩む権利は誰にでもあるので否定しません。でも、もし僕がそのことを相談されたら、「それについて悩みたいですが、悩みたくないですか?」と聞きますね。

編集部 できたら悩みたくないです。

名越先生 だったら悩まないでくださいと言います。

編集部 それはなぜですか?

名越先生 結論から言いますが、目の前にいる夫は、昔の夫とは違います。

編集部 同じ人間なのに、こうも変わってしまうものなのですか?

名越先生 はい、きっと明確な原因はあるはずです。でもその原因を追求するよりも前に、自分の人生をどう生きたいか決断しよう、というのが心理学的なアプローチなんです。そういう意味では、昔と比較して不平を持ち続けている時点で、今日を幸せに暮らすことを放棄してしまっています。まずは、昔の夫と今の夫を比較して怒って過ごす人生がいいか、目の前にいる現実の夫と上機嫌に過ごす人生を選択するか、を考えてみましょう。もちろん心に抵抗が起きるのは分かります。昔はあんなに愛してくれたのに…と頭をよぎるでしょう。

編集部 はい。でも、確かに比較するものじゃないのかも…。それならば今の夫と上機嫌に過ごしたいですね。

名越先生 そう、比較は全部苦しみなんです。それはどんなことにおいても。たとえば10年前の肌と今の肌比べてみて、なったりする(笑)。

編集部 はい(笑)。

名越先生 そう、だからなぜ変わったのかと、原因を考えることをいったん止めて、今の、今日一日の問題としてとらえ直して欲しいんです。今の旦那さんとどういう関係を結びたいかに論点に切り替えるんです。

夫が変わったのは、
理想を目指した妻にも原因が。

編集部 でもやっぱり自分は変わっていないはずなのに、なぜって思ってしまいます…。本性が出てきたのかなーとか。

名越先生 そうでしょ、そう思っちゃうの。でもそれは原因を相手に全部押し付けてしまうことにつながって行きます。たとえば、これは個人的なつまり編集さんの場合なのですが、夫が変わってしまったのは、妻側にも一つの原因があります。編集さんのような方には特徴があって、理想の妻、母親を目指そうとする傾向がある。その理想に近づくために夫にあれこれやってあげたり、尽くし過ぎて甘やかしてしまった可能性もある。

編集部 ああ、理想の妻になろうと頑張っている人が一般にも多いように感じます。夫のリクエストに応えたくて。

名越先生 そう、夫が変わってしまう原因のひとつに、夫の要望に何でも応えるという日常を妻側が作ってしまったんです。つまり妻が対等の立場ではなくて、親子の様になって夫が子ども返りしてしまう。でもそれは妻だけのせいじゃない。文化の影響も大きくありますね。

編集部 文化の影響とは?

名越先生 日本は母親信仰が強く、女性にあまりにも期待し過ぎているところがある。でも何年も一緒にいれば慣れ合いも出てくるし、子どもができたり、仕事が忙しかったり、夫だけに構っていられなくなって、関係がこじれ始めるんです。例えば、夫が何もしないことに怒ったり。改善するには今までの関係性を見直す必要があります。変わったのは夫だけじゃないってことなのです。


夫が変わってしまった原因は、どちらが悪いというより二人の関係の持ち方にあるという名越さん。次回、その解決方法を教えてもらいます。

名越康文さん
なこし・やすふみ●1960年、奈良県生まれ。精神科医。相愛大学、高野山大学客員教授。近畿大学医学部卒業後、現・大阪府立精神医療センターにて精神科救急病棟の設立、責任者を経て、99年に退職。現在はテレビ・ラジオでコメンテーター、雑誌連載、講演会、映画評論、漫画分析などさまざまな分野で活躍中。「SOLO TIME~ひとりぼっちこそ最強の生存戦略である」(夜間飛行)など著書も多数。公式HP http://nakoshiyasufumi.net/